自慢について①
実は日本には自慢があふれています。欧米圏に比べて自己アピールがはばかられる日本で自慢があふれていると考えにくいですが、ちょっと穿った視点で注意深く人の話を聞いていると自慢に見せないようにしながら、巧みに自慢をしてくる場面に出くわします。
それで思い出すのが、小さい頃に読んだ植田まさし先生の4コマ漫画です。男の子(コボちゃん?)がクラスメイトと話をしています。
寒い冬はこたつから離れられない、みたいな内容をクラスメイトに話すとそのクラスメイトは「うちにはこたつがない」と言います。
男の子はこんなに寒いのにこたつがないのは気の毒と思いますが、4コマ目クラスメイトのリビングが出てきてオチが付きます。
そこにはこたつではなく、エアコンをつけてソファに座り優雅にくつろぐ家族の姿がありました。
これもみようによっちゃ自慢なんです。こたつがないと言っているものの、言った本人はこたつがないことを悲観しているわけではなく、エアコンで快適な生活をしているということを含ませているのです。
この類の自慢がそこかしこにあふれています。
実生活で最近よく耳にするのが、「うちにはテレビがない」「テレビをあまり見ない」という自慢です。
高度経済成長期のはじめにテレビがないというと、経済的余裕がないのかと哀れみの対象となったかもしれません。
バブル期にテレビを見ないというと、時代の流れに乗っていない変わり者とみなされていた可能性もあります。
テレビは安価で手に入り、またコンテンツとしての価値が下がってしまった現代、「テレビをみない(持っていない)」というのは「テレビの情報に踊らされない自分」・「テレビより楽しいことを知っている自分」を自慢することができます。
それはテレビにかじりついているより、新しいステージに立てている優越感を意味するのです。
この「持っていない系」の自慢はよく見かける自慢手段です。
断捨離、ミニマリストのブームも手伝って、持っていることより持っていないことがかっこいいというムードになっていることが拍車をかけているように感じます。
例えば、
「車を持っていない」自慢
一昔前までは男性は女性をデートに誘うために、家族で買い物やレジャーに行くために車は必須アイテムでしたが、そもそもデートに行くための恋人さえもいらなくなっている時代、モテるための車なんて発想が薄れてきています。
カーシェアリングや、車を必要としないレジャー、通販などが活発化し、そんな情報を多く持ち駆使することが出来る人は車を所有することを不経済と感じるでしょう。
車を持っていないという言葉の中に、それらの情報を持っている強者であるというメッセージが隠れているのです。
「服を10着しか持っていない」自慢
どこかで聞いたことのあるフレーズですが、本のタイトル以外にも最近では女優の北川景子さんがバラエティ番組で発言したことでも話題になっていました。
女優さんだと高級ブランドの洋服を毎日とっかえひっかえしているイメージですが、それとは真逆で、買ったら買っただけ処分していると話し驚きを与えていたということです。
庶民派を印象付けるだけでなく、これも完璧な自慢です。良いものを見極め自分に必要なものがわかっている、それで着まわせるだけのファッションセンスを持っている、という自慢が隠れているのを見逃してはいけません。
人は認められたい生き物です。でも認めて褒めてと真正面から向かって言っても受け入れられないこともわかっています。こうやって自慢を滲みだす方法で、そんな自分に折り合いをつけているように思います。
他にも気になる自慢があるように思います。思いついたらまた書きたいと思います。